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虹のすべり台 by リュート

虹のすべり台 15 出発

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「千年ぶりね」と桜ちゃんは言いました。

 ペガサスのユキはゆっくりと身体を起こし、ベッドから下りました。

 身体を一つ一つ確かめ、羽を動かし、そして桜ちゃんのほうを見ました。

「ありがとう、桜ちゃん。やっとここに来れたのね」

「ユキちゃん、桜ちゃんのこと知ってるの!」
とトモちゃんはびっくりしました。

「もちろん、知ってるわ。
 千年前に、虹のすべり台から落ちて困っていた私を助けてようとしてくれたのは
 桜ちゃんだもん」

「へええ! ユキちゃんもそうだったんだ」

「うん。
 でも、結局流れ星チーターに捕まって、
 月につれて行かれてしまったんだけど」

「それで、馬に変化したまま、ずっとさ迷っていたのね」

「最初は何も思い出せなかったの。
 でも、だんだん思い出せるようになって、
 ライオン先生に出会えて、トモちゃんに出会えて、
 こうしてまた桜ちゃんと出会えたのよね」

「それで私のこと、あんなに必死に守ってくれたのね?」
とトモちゃんは言いました。

「だって、トモちゃんまで月につれていかれたくなかったんだもん」
とユキちゃんは言いました。
「私もお母さんのところに産まれたかったわ。
 虹のすべり台を楽しみに滑っていったの。
 でも、途中ですとんと落ちてしまった。
 赤ちゃんはいらないって、私の体を捨ててしまったのね。

 だからお母さんのお腹に入ることができなかった。

 桜ちゃんがなんとか私をもう一度虹のすべり台に行けるように、
 手を尽くしてくれたけど、結局捕まって月に連れていかれて、
 私は獣になってしまったの」

「どうしたら、元に戻れるの?」とトモちゃんは訊きました。

「百人の迷子になった可哀想な赤ちゃんを、
 虹のすべり台に戻してあげることよ」と桜ちゃんは答えました。

「どうやって戻すの?」

「今までそれがわからなくて、困っていたの。
 そこにトモちゃんが来てくれたの」とペガサスのユキは言いました。

「あ、そっか!」とトモちゃんはひらめきました。
「ユキちゃん、羽が戻ったんだ。だったら簡単じゃん。飛んでいけばいいのよ!」

「そうね」と桜ちゃんは言いました。
「この社には月の力で獣になった赤ちゃんがたくさんいるの。
 赤ちゃんを百人助けて、早く自分も人間の赤ちゃんになれるよう、
 みんな働いているの。
 あなたはもともとそんなペガサスだったの。

 羽を取り戻したのなら、もう大丈夫。
 赤ちゃんを、再びお母さんの元にたどり着けるよう、助けてあげて」

 ユキはうなずきました。
「まずはトモちゃん。君をお母さんのところに連れて行くわ」

「行けるの?」とトモちゃんは訊きました。

「行けるわ」と桜ちゃんは言いました。
「あなたのお母さんが呼んでいるわ。
 さあ、もう一度、虹のすべり台を滑ってみましょう。
 そして今度こそ、お母さんのお腹に完璧な虹をかけてみましょう」

「乗って」とペガサスのユキは言いました。

 トモちゃんはユキの背中にまたがりました。

「ありがとう!」とユキは言いました。

「ありがとう!またね!」とトモちゃんは言いながら、
 桜ちゃんの手を一瞬握りました。

 ペガサスのユキは羽を広げ、羽ばたきを始めました。
 トモちゃんはユキの首にしがみつきました。
 ユキはふわりと空中に浮かんだかと思うと、さらに上へ上へと飛んでいきました。

 トモちゃんは、桜ちゃんにずっと手を振っていました。

 桜ちゃんもずっと二人を見送っていました。

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