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にこ蔵さん

第6話 自分に出逢う

0610

一樹:
というのは、僕も今、詩などを書いています。
その書き始めた時期というのが、とても苦しかった時で
自分で書いた言葉に自分が救われたと感じることがあって、
同じなのかなと思いました。

にこ蔵さん:
そうですね。例えば自分が書いた言葉の中で
「失敗してもいいんだ。
つまずくことが出来たからわかったじゃないか」とか。

「出会いがあったから、自分が変われた」とかいうのがありますが
書くことで自分自身がそれらに気付かされるということはたくさんあります。

実は僕、昔から自分自身を否定しているところがどこかにあったのです。
どちらかというとマイナス思考の人間だったし
何か良い事があると、そのぶん、悪い事があるのだって
想像してしまっている部分がありました。

今だから、言えますが
自分の価値観を見失って、
自殺を考えてしまうなんてこともありました。

橋の上を歩いている時にふらっと飛び降りてしまおう
なんて考えてしまったりもして…。

でも、ある本に出会ったのです。
「夜と霧」というヴィクトール・E・フランクルという
ユダヤ人で精神科医をされている方がナチスの
強制収容所での体験を綴った本なのですが
この本を読んで、収容所のでのあまりにも壮絶な体験を知って
自分は全然幸せじゃないかって感じたのですね。

彼の体験によると、収容所では死を選ぶ事も
できないくらいの地獄を見たそうなのです。

彼は、人が虫ケラのように焼かれ、
仲間の一人が「今日はお前だ」と選ばれ
次々に殺されていってしまうような世界を次々に書いていきます。

そんな状況に陥ってしまうと人の精神状態は
変化していってしまうそうです。

仲間が殺されると決まった時に
あいつの掃いている靴は新しいから、これで、履くものが増えるな
よし、使える歯ブラシがまた1つ増えたぞ、そんな考え方になってしまう。
周囲の人に対して、可哀想だなんて考えられなくなっていくのですね。

一樹:
人間の欲に基づいた考え方しか出来なくなると。

にこ蔵さん:
その通りです。そんな状況でも彼は希望を失わないのですね。
ここが非常に面白いところなのですが、彼は親しい仲間の中で
1日に1度は楽しいジョークを言い合おうと約束をしていく。

そして結果的にそういう人たちが生き残っていきます。
普段からユーモアを大切にする人だとか
夕日を見て感動できるような感性のある人達が生き残る事ができたそうです。

一樹:
それは面白いですね。肉体的にタフで強靭な人の方が
生き残っていけそうな気がしてしまいますが…

にこ蔵さん:
普通は、そう考えてしまいがちなのですが
そういう人たちは意外と早く亡くなっていってしまうそうです。

その本を読んでから、僕は自殺なんかしちゃいけないと思い直しました。
それから、また段々と気持ちに変化が起こり始めて
ぜんきゅうさんとの出会いの中や、制作に打ち込んでいく生活の中で
自分を認めていくということが段々出来るようになっていきました。

何枚もお地蔵さんを描いていると、
上手くいくこともあるしそうではないこともある
うまく出来ない自分も自分、そんな風に思えようになってきました。

一樹:
色々な人や、本に出会い
ダメな自分を許すということを自然に覚えていった
聞いているとそんな感じがしますね。

ちなみに実際にお地蔵さんを描き始めて
どのくらいになりますか?

にこ蔵さん:
もう3年くらいになりますね。

一樹:
え!絵を見せていただいいると、とても3年に見えませんよ。
もっと前から描かれていると思っていました。

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