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サンマーク出版 編集長:鈴木七沖

第8話 『自殺って言えなかった』子供達との出逢い

一樹:
はい、それではそろそろ次の本へいってもよろしいでしょうか?

鈴木さん:
そうですね、まず『自殺って言えなかった』からいきましょう。
この本は約6年前に担当した本ですね。

自然食運動家の東城百合子先生著『お天道さま、ありがとう』が
僕の書籍編集者第1弾だとしたら、
『自殺って言えなかった。』は、
編集者としての自分の役割に気づかせてくれた、
とても大切な、想い入れのある本なんです。

こんなエピソードがありまして。

一樹:
ぜひ、聞かせて下さい。

鈴木さん:
13人の子どもたちと作りました。

一樹:
へ~!!

鈴木さん:
当時、1998年から日本の自殺者数が、
警察庁が発表している数で3万人を越えるわけですよ。

一樹:
そうですね。

鈴木さん:
去年の6月に発表された数字も、
ほとんど変わらないんですよね。

それは、いろいろな要因があるかと思うんですけど、
それにともなって自殺遺児っていうか、そういった子どもの数が
今はおそらく何十万人になっていると思うんですよ。

それと僕自身、私生活で家族との死別体験を目の当たりにした時期でもあり、
「いのち」に対する思いが強かったのもあって、
ぜひ彼らと本を作りたかったんですね。

ところが、2002年の11月から
彼らに30社ぐらいからのオファーが来ていたんですよ。

というのは、彼らが『自殺って言えない』っていう小冊子を出していて、
それが社会的に話題になっていたんですね。

ちょうど日本の自殺者数が増えていたこともあって、
そういったオファーが殺到したそうです。

大手出版社からは複数人でスクラムを
組んだ熱烈なアプローチもあったようですが、
結果的にはたった一人でラブコールを送りつづけた僕を選んでくれました。

それで子どもたちと本作りが始まったんですけど、
いろいろな子どもがいまして、例えば、ある子どもは中学のとき、
思春期ですから親とお風呂に入りたくないですよね。

そりゃぁもう・・・チ○毛も生えてきて。

一樹・杉ちゃん:
・・・。
(大爆笑)

鈴木さん:
(笑)
それで、その子がお風呂に入っていたら、
急にお父さんが来て、「一緒にお風呂に入っていいか?」と。
でも、息子さんは「嫌だ!」って断っちゃうんです。

それで、次の日にお父さんがビルから飛び降りてしまうんですね・・・。

一樹:
・・・。

鈴木さん:
それで、その子は当然、強烈な自責の念にかられてしまいます・・・。

「あの時、自分がお父さんの背中でも流せば、
お父さんは死ななかったんじゃないか・・・」って。

皆、13人のうちの一人ひとりが自分を
責める気持ちを抱えているんですよ。

そういう子どもたちに、僕は基本的に
「自分で書いてね」ってお願いしたんですね。

でも、なかなか書けないじゃないですか。

楽しかったことは書けても、
自分が一番自責の念を持っている出来事って、
人間は掘り起こせないんですよね。

一樹:
普通はフタをしてしまいますよね。

鈴木さん:
僕もそれは分かっていたんで、彼らと付き合っているときは、
夜は携帯電話の電源を切らず、オープンにしていたんです。

すると、ある1人の少年から夜中の1~2時ぐらいに電話があって、
「やっぱり七沖さん、書けません・・・」って。

っていう話をしてゆく中で、
当時僕は36歳だったんですけど、
ちょうど彼のお父さんが亡くなったのも35~6歳で。

今、彼らのお父さんと同じぐらいの僕に、
彼は「親父が亡くなった同じ年齢の鈴木さんは
何を考えながら生きてるんですか?」って。

その時、僕は半分寝ていましたから、
言葉が詰まってしまって・・・。

だけど、いろいろな話のなかで、
ついこのあいだ僕自身も死別体験をしたので、
「あのさぁ、いのちを語る切符を手にしたんじゃないか」
っていう話を彼にさせていただいて。

だから、せっかくご縁をいただいて、
「原稿を書くことになって、なにを書くかは君の自由だけど、
やっぱりいのちを語る切符をもらった以上は、
読んでいただく人に向けてメッセージを
込めたらどうだろうか」っていうところで
最終的には、彼らも書き終えたんです。

それからも、いろいろなドラマがありました。

結果的に2002年の秋に刊行されて、
読売や朝日など様々なメディアが取り上げてくれたんですよ。
朝日新聞の「天声人語」では2日間にわたって取り上げてくれました。

一樹:
へ~!!

鈴木さん:
それもいい体験だったんですけど、
本が出て6万部ぐらい読まれたんですが、
その時に、またいいタイミングで貴重な体験ができました。
神さまに感謝したいほどの体験。

その時に、僕は普段めったに野球は見ないんですけど、
たまたまチケットをいただいて巨人×阪神戦を見に行ったんです。
当然、満員御礼だったんですよね。
その時にパッと伝言掲示板に「5万5千人、満員御礼!!」
と表示されているのを見て、
「あぁ・・・これが5万5千人かぁ・・・」って分かった時に、
6万人の読者とほぼ同じ数字じゃないですか・・・。

もう涙があふれ出てきましてね。
「これだけの人が、自分が関わった本を読んでくれたんだぁ・・・」と思うと、
編集者はリアルな読者の数字って、
なかなかヴィジュアルではイメージできないんですね。

だけど、東京ドームが満員のイメージが頭に焼きついてるんですよ。

もう読者に足なんて向けられなくて、
そう意味でもこの本がスタートラインにしては
すごく意義深いものになりましたね。

どれだけ多くの人の人生に影響を与えているかってことですよね。

一樹:
それに身をもって体験して気づいたというのは、
ほんとうに素晴らしいことですよね。

鈴木さん:
いやーー、
本当にそうですね。

一樹:
次からの本作りに対する姿勢も変わってきますよね。

鈴木さん:
変わりましたね。


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ディスカッション

One comment for “第8話 『自殺って言えなかった』子供達との出逢い”

  1. 編集者として……よりも「人間として」
    強烈な体験が出来た一冊でした。

    この本を担当することが出来たことは、
    自分にとっても大きな肥やしになっています。
    それはけっして消えることなく、
    いつまでもいつまでも小さな「火」となって、
    僕のやる気を燃やしつづけてくれています。

    本当に、本当に心から感謝する「志事」でした。


    Posted by 七沖 | 1 月 2, 2009, 18:10:56

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